下肢閉塞性動脈硬化症とは
足の血管で動脈硬化が起こって発症します。足の動脈が狭窄や閉塞を起こして血流を確保できなくなります。初期症状には、足のしびれや痛み、冷えなどがあります。痛みから歩行障害を起こし、さらに進行すると足が壊死して切断が必要になるケースもあります。
発症が多いのは50歳代以降の男性で、危険因子には喫煙、高血圧、脂質異常症、糖尿病、肥満、慢性腎不全などがあります。
以前は下肢閉塞性動脈硬化症(ASO:Arterio-sclerosisObliterans)と呼ばれていましたが、より広い概念を含む末梢動脈疾患(PAD:PeripheralArteryDisease)として把握されて治療方針を立てることが増えてきています。
下肢閉塞性動脈硬化症の症状
進行段階によって、さまざまな症状を起こします。典型例をまとめたフォンテイン分類が診断に役立ちます。
フォンテインⅠ度(軽症) | 足先の冷え、しびれ。足指が青白いなどがあります。 |
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フォンテインⅡ度(中等症) | 歩行中にふくらはぎの痛み、しびれ、だるさなどで歩くのが困難になり、少し休むと再び歩けるようになる症状です。(間欠性跛行(かんけつせいはこう)) |
フォンテインⅢ度(高度虚血) | 安静にしていても足が常に刺すように痛みます。 |
フォンテインⅣ度(重症) | 足先に潰瘍ができます。また、壊死して黒くなります。常に足の激痛がありますが、糖尿病による神経障害がある場合には痛みを感じないこともあります。放置していると足を切断する必要が生じる場合もあります。 なお、男性の場合、ED(勃起障害)を起こすことがあります。 |
下肢閉塞性動脈硬化症の診断
健康保険証をご持参ください。またお持ちの場合には、お薬手帳や高血圧管理手帳もご持参ください。
問診
症状の内容、はじまった時期、お悩みの点などを伺います。また、病歴や飲んでいるお薬などについても確認します。
足の視診、触診を行った上で、血液検査、超音波検査、ABI検査などの必要な検査を行います。痛みや不快感がほとんどない検査ばかりですので、ご安心ください。
視診・触診
歩き方や足の色調、潰瘍の有無など皮膚の状態を確認します。動脈の拍動を確かめ、くるぶしの周辺にある後脛骨動脈や足背の足背動脈の拍動を確認できるか確認します。
間欠性跛行などの症状は整形外科領域の疾患でも起こることがあるため、その可能性も考慮して診察します。整形外科受診の必要があると判断された場合には、連携している医療機関をご紹介しています
足関節上腕血圧比(ABI)
腕と足首にカフをつけて血圧を測定する検査です。ABIは、足関節の収縮期血圧を上腕部の収縮期血圧で割った値です。動脈に閉塞や狭窄があると、この数値が低くなります。ただし、糖尿病のある方や透析を受けている方は、足の動脈に閉塞や狭窄があっても数値に異常が現れないことがあるため注意が必要です。
超音波検査
ABI検査で閉塞性動脈硬化症が疑われる場合、超音波検査で閉塞や狭窄を起こしている血管がどこにあるのかを確認します。超音波検査は造影剤が不要で被ばくしないため安全性が高く、痛みや不快感もない検査です。
カテーテル検査
確定診断のためにカテーテル検査が必要になることがあります。1~3泊の入院が必要な検査です。入院可能な連携医療機関で検査を行います。
下肢閉塞性動脈硬化症の治療
生活習慣改善
動脈硬化は生活習慣の改善によって悪化を防ぐことができます。他の生活習慣病の予防にも役立ちます。特に重要なのは禁煙で、喫煙による血管の収縮を起こさないようにします。食生活は、カロリー、コレステロールや中性脂肪、塩分を制限し、食物繊維をたっぷりとり、ビタミン・ミネラルなど栄養バランスのとれた内容を心がけます。速足の散歩程度の運動を習慣付けて肥満を解消し、適正体重をキープしましょう。
薬物治療
高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病があって薬物療法を行っている場合、医師の指示を守ってしっかり薬を服用してください。血管や心臓への負担を軽減させることで、動脈硬化の進行を防ぎます。
足の手入れ
足が冷えないようにして、清潔に保つことが重要です。また血流が悪化しているため、ケガをすると治りにくく、悪化させやすいので、サンダルなどを避けてケガをしないよう注意しましょう。
夏でもできれば毎日入浴してバスタブに浸かり、芯まで温まってください。入浴後はすぐにソックスをはき、冷えないようにしましょう。マッサージやストレッチ、足先やかかとを上下させる運動なども有効です。
外科治療
狭窄や閉塞がある場合、カテーテル治療やバイパス手術などが必要になることがあります。カテーテル治療は、細い管を挿入し、狭窄部分をバルーンやステント(網状の筒)で拡張する治療法です。バイパス手術は閉塞している場合に行われる手術で、閉塞部分をバイパスするように自己血管や人工血管をつないで血流を迂回させて改善させる治療法です。当院では対応していないため、必要な場合は連携医療機関を紹介します。