足のむくみ
夕方になると靴が少しきつく感じるなど、足はむくみを起こしやすい場所です。むくみは医学的に「浮腫」と呼ばれていて、足のむくみのほとんどは一時的なものですが、心臓や腎臓、血管などの深刻な病気の症状として現れていることもあります。治療が必要なむくみかどうかは、診察と下肢静脈超音波検査や心臓超音波検査、血液検査などを行って診断します。
足のむくみを起こす原因
深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)
緊急に適切な治療を行わないと、血栓が肺に飛んでしまい、命の危険にもつながりかねない病気です。下記のような症状があったら、すぐに血管外科を受診してください。特に息苦しさや胸の痛みをともなう場合には、できるだけ早い受診が必要です。
- 比較的急激に足のむくみが現れます
- 片足だけ腫れやむくみを起こします
- 片足全体がカチカチ・パンパンに腫れる・むくみます
- 張りや痛みを感じます
- 発熱や腫れ部分の熱感がありません
血液検査や超音波検査を行い、深部静脈血栓症と診断されたら抗凝固薬(血液サラサラにする薬)の服用を開始します。なお、息苦しさがある場合には、肺に血栓が飛んで肺塞栓症を起こしている可能性があります。その場合には、すぐに連携している高度医療機関をご紹介し、入院による治療など適切な診療を速やかに受けられるようにしています。
心不全
心臓の機能が低下してしまうと、末梢に届いた血液が心臓に戻れなくなってたまり、血液中の水分が血管からしみ出てむくみを起こします。心臓の機能低下によるむくみは、足だけでなく手や顔にも現れることがあります。心臓超音波検査や血液検査を行って診断します。
腎不全
腎臓は血液から余分な水分と老廃物を取り出して尿として排出します。この腎臓機能が低下すると体内の水分排出が滞って身体がむくみます。血液検査で診断します。
低たんぱく
アルブミンという肝臓で作られるたんぱく質が不足すると、血液の水分が血管からしみ出してむくみを起こしやすくなります。血液検査で診断します。
甲状腺機能低下
首にある甲状腺という内分泌器官は、活動するために不可欠なホルモンを分泌しています。この甲状腺が機能低下を起こすと、むくみを生じることがあります。血液検査で診断します。
薬の副作用
薬の副作用としてむくみが現れることがあります。多いのは、高い血圧を下げる降圧剤のカルシウム拮抗薬によるむくみです。処方薬を変更することで解消できます。
下肢静脈瘤
足の静脈瘤が悪化して、足に血液がうっ滞してむくみを起こします。下肢静脈超音波検査で足の静脈の状態を確認して診断します。軽度の場合には医療用弾性ストッキングの着用で症状を抑えることができますが、根治には手術による治療が必要です。
リンパ浮腫
足のリンパ液の流れが滞って足にむくみを起こしている状態です。卵巣がんや子宮がんの手術を受けた女性が、手術後何年か経過してからリンパ浮腫を起こすことがあります。これはリンパ液の流れ方が手術によって影響を受け、時間をかけてむくみにつながっていると考えられています。また、こうした原因なく、リンパ浮腫を起こすケースもあります。
完全に治すことは困難ですが、医療用弾性ストッキングの着用や静脈リンパ管吻合手術などによって症状が緩和することもあります。
足のむくみの対策と治療
一過性のむくみで軽度の状態であれば、横になって足の下にクッションなどをあてがい、足を心臓より上にすることで解消します。また、たまった血液を心臓に戻すために、ふくらはぎを動かすことも有効です。デスクワークの場合はこまめに立ち上がって歩きましょう。飛行機など長時間座りっぱなしになる場合は、足先とかかとを交互に上げて、ふくらはぎの筋肉をしっかり動かす運動をしてください。また、散歩やストレッチを習慣付け、足の筋肉を鍛えましょう。
また、医療用弾性ストッキングの着用もむくみの軽減に役立ちます。この医療用弾性ストッキングは、足首への圧迫が最も強く、上に行くに従って圧力が下がる設計で作られています。これによって血液が心臓に戻りやすくなります。ご自分の足に合ったものを、正しく着用しないと血行を妨げるなど逆効果になることがありますので、必ず医師の診断を受けて処方してもらい、着用の指導を受けましょう。
また、当院では血管の病気を専門に診療を行っています。弾性ストッキングの正しく着用法のご指導や、下肢静脈瘤の根本的な治療を行っています。足のむくみに関するお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。