シャントトラブル

シャントトラブルについて

透析治療は週に3回程度行う必要があり、そのたびに大量の血液を出入りさせます。そのため、血液の出入口となるバスキュラーアクセスに使われる血管や人工血管には、様々なトラブルが起こりやすい傾向があります。主なトラブルには、血管が狭くなる狭窄、詰まってしまう閉塞、感染、コブができて腫れる、腕や手がしびれる静脈高圧症、手や指が冷えて紫色になるスチール症候群などがあります。
原因となるのは、針の穿刺、手術痕の癒着、血管が引きつれる、動脈の血液が静脈に流れ込む、シャントから過剰な血液が流れてしまうなどがあります。シャントトラブルにいち早く気付いて大きなトラブルになる前に適切に管理するためには、医師や看護師など医療スタッフ任せにせず、患者様ご自身が注意深く観察して兆候などを見逃さないようにすることが重要です。普段と違う感覚、ちょっとした違和感があった場合には、すぐにご相談ください。

よくあるトラブル

シャント狭窄

シャントが狭くなっている状態です。

兆候

  • シャント音が弱くなる・音が短くなる
  • 高いシャント音がする(ヒューヒュー・ピーピーなど隙間風のような音)
  • 触ってサワザワするスリルが弱くなる
  • 透析している際に、静脈圧が高くなる
  • 枝がたくさん出る
  • シャント側の腕のむくみ、しびれ

シャント閉塞

血栓(血のかたまり)ができる、または狭窄が進んでシャントが詰まっている状態です。

兆候
  • シャント音がしなくなる
  • 触ってザワザワするスリルがない
  • シャントのつなぎ目だけがドキドキする
  • シャント血管が硬く・赤くなり、痛みを感じる

感染

頻繁な穿刺、人工血管のシャント、カテーテルなどは細菌感染リスクが高いため、注意が必要です。兆候があっても放置してしまうと、大出血や全身感染を起こす可能性があって危険です。

兆候
  • 赤く腫れる
  • 痛みを感じる
  • 進行すると大出血や全身感染を起こすことがあります。

自己血管の場合には感染した部分を閉じ、新しいシャントを作る必要があります。人工血管の場合は、1部、または全部を摘出して交換します。感染の程度などによって治療内容は変わります。

シャント瘤

血管が局所的に拡張してコブ状に腫れている状態です。吻合部や繰り返して穿刺する場所に生じます。

兆候
  • シャントに腫れがある

コブ状になった腫れを切除し、新たなシャントを上流側に作ります。

静脈高血圧

シャント上流の血管が狭窄を起こしていて、血液の逆流やうっ血を起こし、腕にむくみや腫れを起こしている状態です。中心静脈の狭窄では腕全体が腫れ、肘の静脈が狭窄していると前腕が腫れます。また、心臓に近い場所で狭窄した場合には、肩や顔まで腫れることもあります。

兆候
  • 腕などのむくみ、腫れ

治療では主にバルーンカテーテルを用いたPTAを行います。また、シャント閉鎖が必要になることもあります。

スチール症候群

スチールは盗むという意味で、指先に行くはずだった血液がシャントに「盗まれて」、指先に酸素や栄養素が届かなくなり、指先が冷える・紫色になる状態です。痛みや壊死を起こすこともあります。

兆候
  • 指先の冷え
  • 指先が紫色になる
  • 指先の痛みや壊死

最も有効な治療法はシャント閉鎖です。

シャントトラブルの治療(シャントPTA 経皮的血管形成術)

シャント内にバルーンカテーテルを入れてふくらませ、狭窄・閉塞を解消します。局所麻酔で行うことができ、30分程度で終了する日帰り手術です。血栓を取り除いたり、血栓溶解剤で溶かす治療を同時に行うこともあります。皮膚切開はせずにカテーテルの針を刺すだけで行えます。再発した際にも繰り返しシャントPTAの治療が可能です。

血栓溶解法とPTAを組み合わせた治療

閉塞した部分に血栓溶解剤を注入し、血管をマッサージします。血流が再開したらPTAを行い、シャントを確保します。

血栓除去術とPTAを組み合わせた治療

専用バルーンを使って血栓を掻きだして除去し、血流が再開したらPTAを行い、シャントを確保します。

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