下肢静脈瘤とは
足の静脈内にある逆流を防止する弁が壊れ、血液が逆流し血管内に溜まってしまう病気です。足がだるい・重い・むくむといった症状が初期症状があり、やがて足にコブのようなものができたり、細い血管が透けて見えるようになります。さらに進行すると、色素沈着や潰瘍などができるなど、皮膚トラブルを繰り返すようになります。
下肢静脈瘤の主な症状
初期症状
- 足がむくむ
- 夕方になると足がだるい・重い
- 足が冷える、ほてる
- 夜寝ている時によく足がつる
見た目の症状
- 足の細い血管が透けて見える
- 足の血管がボコボコと浮き上がってきた
- 足にコブ状のふくらみがある
進行すると現れる症状
- 足のケガが治りにくい・色素沈着する
- 足に湿疹ができやすい、かゆい
- 足にただれや潰瘍ができている
など
下肢静脈瘤の原因
血液は心臓から動脈を通り全身に送り出されます。酸素と栄養素を届けた血液は、老廃物を回収して静脈を通って心臓へ戻ります。足は心臓から遠い場所にあって、重力の影響を受けます。このとき、血液を戻すためにポンプとして働いているのがふくらはぎの筋肉で、静脈を通って運ばれている血液が逆流して戻らないようにしているのが逆流防止弁です。下肢静脈瘤は、この逆流防止弁が壊れてしまうことで発症します。
早期には自覚症状がほとんどありません。進行するにつれ、足のだるさやむくみ、足がよくつるなどの症状を起こします。さらに悪化すると、足にコブのようなふくらみができる・細い血管が透けて見えるようになります。重症化すると、色素沈着、湿疹、潰瘍などの皮膚トラブルが起こります。
下肢静脈瘤リスクの高い方
女性
女性は男性の約3倍、下肢静脈瘤になりやすいとされています。生理前や妊娠中はホルモンの影響で血液量が増加するため、女性は静脈弁が壊れやすいと考えられています。
高齢者
加齢に伴い、血液を戻すポンプとして働くふくらはぎの筋肉が衰えてしまうめ、弁にかかる負担が大きくなります。また弁自体の機能も加齢で低下するため、下肢静脈瘤リスクが高くなります。
立ち仕事
立っている状態は、足が心臓から最も遠くて、最も強く重力の影響を受けます。さらに立ったままあまり動かないとふくらはぎがポンプとして働かないため、弁への負担がより大きくなってしまいます。
遺伝
下肢静脈瘤の血縁者がいると、発症しやすいとされています。両親ともに下肢静脈瘤の場合、子どもの90％が下肢静脈瘤を発症するという調査報告もあります。
下肢静脈瘤の検査
基本的には超音波検査を行い診断します。超音波検査は、血管の状態や血液の流れをリアルタイム画像として確認でき、痛みや不快感がなく安全性の高い検査です。簡単に繰り返し行うことができるため、診断の際だけでなく、治療効果の確認などにも使われます。
ドプラ検査
逆流の有無を調べる検査です。皮膚の上からプローブを当て、1分程度で調べることができます。
カラードプラ検査
血流の状態をリアルタイム画像として確認する検査です。血管だけでなく、臓器などの形も確認できるため、循環器疾患以外にも幅広い疾患の診断に使われています。
下肢静脈瘤の種類
どの部分に静脈の拡張・ふくらみができるかによって、いくつかの種類に分けられます。
伏在静脈瘤
下肢静脈瘤のうち、7～8割はこの伏在静脈瘤だとされています。
伏在静脈は。伏在静脈は、足の付け根・太もも・ふくらはぎにある太い静脈で、くるぶしから足の内側を通って足の付け根で大腿静脈と合流する最も太い静脈の大伏在静脈、足の裏側を通って膝の裏で深部静脈と合流する太い静脈の小伏在静脈に分けられます。どちらも合流する場所の弁が壊れやすいため、大伏在静脈ではふくらはぎなどにコブができやすく、小伏在静脈瘤ではふくらはぎ周辺や膝の裏側にコブができやすい傾向があります。
側枝静脈瘤
大伏在静脈や小伏在静脈といった伏在静脈の本幹ではなく、本幹から枝分かれした足の血管の末端の静脈で逆流防止弁が壊れている状態です。伏在静脈瘤との併発も多いです。静脈瘤ができやすいのは、膝の裏側、太もも、ふくらはぎです。狭い範囲に静脈瘤ができるため、主に一部分がふくれて浮き上がってくる症状が現れます。大伏在静脈の枝分かれする部分の弁不全、静脈の機能不全、骨盤内の静脈の逆流などによって発症します。
網目状静脈瘤
皮膚の上から細く青い血管が透けて見える状態で、生じやすい場所は膝の裏です。血管が隆起することはありません。皮下の浅い部分にある細い静脈が拡張している状態です。
クモの巣状静脈瘤
網目状静脈瘤よりさらに浅い部分にある真皮内静脈が拡張しています。とても細い血管が放射状に広がって拡張することで、皮膚の上からクモの巣のように透けて見えます。生じやすい場所は太ももや膝裏などです。血管の隆起はありません。
下肢静脈瘤の治療
下肢静脈瘤の治療は手術が第一選択となります。下肢静脈瘤は良性疾患で、治療を受けなくても命の危険はありません。適切な治療によって症状を改善できるため、日常生活や仕事に支障が及ぶ場合には、できるだけ早期の受診をお勧めします。
下肢静脈瘤は、コブなどの見た目が気になってスカートを着られなくなった、温泉旅行をあきらめるなどQOL(クオリティ・オブ・ライフ)低下につながるケースもよくあります。こうした見た目の問題は、早期に治療をスタートすることで、短期間できれいに治すことにつながります。当院では身体に負担の少ない日帰り手術を行っておりますので、お気軽にご相談ください。
