下肢静脈瘤の治療
下肢静脈瘤の主な治療には、圧迫療法、硬化療法、ストリッピング手術などいくつ種類がありますが、現在では、レーザー治療・高周波治療などによる血管内焼灼術が主流となっています。血管内焼灼術は、身体への負担が小さく、安全性が高いため、下肢静脈瘤治療の主流になってきています。
当院では、患者様の状態やご希望に合わせた幅広い治療を行っており、血管内焼灼術も経験豊富な血管外科専門医が最新機器を用いて行っています。こうした手術も、入院の必要はなく、日帰りで受けていただけます。
圧迫療法
医療用弾性ストッキングを着用する治療法です。静脈瘤に血液がたまってしまうことを防ぎ、血液を下から上に、表在から深部へと導いて本来の流れに戻します。症状の悪化を防止して、症状を軽くするための保存的療法なので、根本的な治療には至りません。むくみの解消などは見込めますが、ストッキングを脱いでしまうと効果がなくなるため、起きている間は着用し続けます。
ストッキングは数ヶ月で圧力が弱くなってしまうため、適切な着圧を保つためには平均して半年に数足の購入をお勧めしております。また、圧力がかかることでかぶれなどの皮膚トラブルを起こすことがありますが、その場合は使用を中止してください。正しく着用しないと血流悪化や皮膚トラブルを起こしやすいため、市販のものではなく、必ず医師の診察を受けて適切な着圧のものを選び、正しい着用方法を覚えましょう。
メリット
- 低価格
- ストッキングを着用するだけなので手軽
デメリット
- 保険適用外のため、自費で購入になる
- 着用している間しか効果がない
- 皮膚トラブルを起こす可能性がある
硬化療法
注射で硬化剤を静脈瘤内に注入して、静脈瘤を小さくする治療法です。初期の静脈瘤、網目状静脈瘤やクモの巣状静脈瘤といった細い静脈瘤に適した治療法です。また手術やレーザー治療の補助的な治療としても用いられます。外来で受けることができ、10~15分程度の治療で麻酔も必要ありません。切開も行わないので傷が残ることもありません。
ただし、この治療が可能なケースは限られており、再発も起こります。また、合併症として血栓形成によるしこり、色素沈着などを起こす可能性もあります。
メリット
- 外来で治療可能
- 保険適用
- 切開しないのでほとんど傷跡が残らない
- 治療を受けた当日も普通に歩行可能
デメリット
- 注入した部分に色素沈着やしこりが残る可能性がある
- 注射の痛みがある
- 20~30%に再発が認められる
ストリッピング手術
下肢静脈瘤に対する最も古い根治療法です。皮膚を切開してストリッパーワイヤーという特殊な器具を使い、弁不全を起こしている静脈を抜去する手術です。この治療で静脈を抜いてしまっても静脈瘤内にたまった血液は正常な深部静脈へ流れるため、問題はありません。もともとは入院が必要でしたが、麻酔の進歩により日帰りでも行えるようになりました。
この治療法は1900年代初頭から行われてきており、高い治療効果を誇っています。ただし、血管を引き抜いてしまう際に細かい神経が傷付きやすく、10%程度の頻度で術後にしびれなどを起こす可能性があります。
皮膚を2㎝程度切開する必要がありますが、目立ちにくい足の付け根や膝裏などに行っています。当院ではできるだけ小さい切開にできるよう心がけ、傷跡が目立たなくなるようにきめ細かく配慮しています。
メリット
- 再発率が極めて低く、治療成績が安定している
- 保険適応
デメリット
- 傷跡が残る
- 手術後に痛みがある
- 知覚神経が傷付いてしまい、しびれが残る可能性がある
血管内焼灼術
静脈瘤ができた血管内にカテーテルを通して、レーザーや高周波で血管内側から焼灼する根治療法です。ストリッピング手術と違って切開の必要がなく、痛みや術後の出血を起こす可能性も大幅に低減します。低侵襲で安全性・確実性が高く、傷跡もほとんど残らないため、現在の下肢静脈瘤治療ではこの手法が主流になっています。日本では、レーザー治療が2011年に、高周波治療が2014年に保険適用になっています。当院では多数の血管内焼灼術を経験してきた血管外科専門医の院長が日帰り手術を行っています。
メリット
- 術中・術後の痛みがほとんどない
- 術後の内出血もほとんどない
- 手術後の傷は針の穴だけなので目立たない
- 翌日から普通にお仕事が可能
デメリット
- ごくまれに再発する場合がある
スタブ・アバルジョン法
患者様の下肢静脈瘤の状態、進行状況、症状、ライフスタイルなどを考慮して、いくつかの治療法を適切に組み合わせることで、より効果的に治すことができます。
そのため、血管内焼灼術を行う場合でも、同時に何ヶ所か皮膚を切開して静脈瘤を切除することがあります。当院では、特殊な器具を使って1~3mmというとても小さい傷だけで静脈瘤を切除するスタブ・アバルジョン法(Stab avulsion)を行っています。この手法で行った切開は傷が小さく縫う必要がないため、傷跡が残りにくく、術後の痛みも少なくなっています。
スタブ・アバルジョン法を組み合わせることで、より効果的な下肢静脈瘤治療を行えるようにしています。
治療費用
※標準的な治療の目安となる自己負担額であり、薬代や弾性ストッキングの料金は含まれていません。
※短期滞在手術加算が含まれております。
詳細については、お問い合わせください。
診察内容 | 3割負担の場合 | 1割負担の場合 |
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初診時(初診料+超音波検査) | 約2,500円 | 約900円 |
硬化療法 | 約15,000円 | 約5,000円 |
ストリッピング手術(片足) | 約40,000円 | 約13,000円 |
血管内焼灼術(片足) | 約40,000円 | 約13,000円 |
血管内塞栓術(片足) | 約55,000円 | 約18,000円 |